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店長に伝えろ。ニラを減らせ。

「賭け」作中の重要なセリフからはじめてみました。韓国映画「オールドボーイ」のパロディであることは、皆さん当然お気づきのことと思います。ギジレンのお客様がたはそのほとんどが貴族、そうでなくとも学者や映画監督なんかがほとんどですから、自ずと作品を理解するのに要求される知識教養のレベルも高くなってくるんですね。
 
原作者チェーホフの著書で言えば、
 
かもめ
三人姉妹
ワーニャおじさん
 
ここらへんの有名どころはおさえておいた方が、いっそう作品をお楽しみいただけるかと思います。賭け は読まなくて大丈夫です。
 
また例によって「美味しんぼ」は少なくともアニメ版は全てご視聴しておいて頂かないと、「賭け」の本質についてなに1つ理解できないまま終わってしまう。そんなおそれもありますのでご注意を。
 
 
「嶋谷さんのおっぱいをなんだと思ってるんだ」
 
Gカップだそうです。たいへんなことですよコレは。G?G⁉︎…オーノーグラビティ…
でも言い出したのは本人です。文脈は忘れましたが確かに自分から「あたしおっぱい大きいんで」って言い出したんですよ。別にぼくの耳元で囁いたわけじゃないですよ。老若男女ひしめく稽古場で突然宣言したんですよ。ホントに。
自己紹介が遅れましたギジレンの血便巻き爪担当の佐藤です。
 
そんなことがあったもんで、そりゃあもう芝居で使わないワケにはいかないじゃないですか。おっぱいを。でも本作はご存知の通り子ども向けに作っている作品なので、あまり過激なことがあっては困るワケですよ。だから子どもにも、おじいちゃんにも親しみやすいおっぱいを目指して稽古つけてたらね、サブタイトルの通りです。
 
「嶋谷さんのおっぱいをなんだと思ってるんだ」
 
そんな言葉が稽古場で飛び交うようになりました。なんだとって、そりゃあ…Gカップでしょ…。でもわかる。確かに嶋谷さんのおっぱいばっかりいじってると(語弊)フェアじゃないんで、かと言って他の女優さんたちのおっぱいを不用意にいじる(語弊)と、おっぱいしかない公演になっちゃうから…だからせめてもの罪滅ぼしに男の子たちにもちんちんを触ったり触り合ったりするアクトをオーダーしました。ギジレンはBLにも造詣が深いんです。
 
 
「ここでやないさんに生け花するじゃん」
 
あるシーンのアクトです。非常にスピーディなシーンなので、初見のお客様は見逃してしまうかもしれません。このシーンに限らず、賭けでは初見のお客様には気づきづらいアクトを複数個用意しています。
 
特に意味はないんですが、「賭け」では、「見やすい芝居」を避けて、極力お客様の集中力を削ぎ、話の本筋から意識を逸らさせるような演出を心がけています。話の本筋に絡まない人々や、その他大勢として登場したキャラクターたちに目を凝らすと何かをしている。物語に直接関わらないけれども、彼らにはきっと大事ななにかをしている。そんなシーンが多々あります。彼らだって、村人Aだって生きているんです。
 
なぜそんなことをするのかって?
意味はありません。なんとなくそうしたかったからです。もしかしたら、古典という、価値のある程度保証された(と思われている)ものを上演するにあたって、その価値を一度ゼロに戻すような、もしくは単に反抗心からくる試みかもしれません。
 
話が逸れましたね。やないさんの生け花の話でした。これはやないさんが生け花をするシーンがある、ということではありません。やないさんが生け花になる。というかされるシーンがある。ということですね。話の本筋にはまったく関係ありません。しかしぼくはこのアクトの実現のために生け花教室に通いました。小さな器の上にたちあらわれる宇宙の深さを、お芝居を通じて、そしてやないさんを通じてお客様がたにお伝えしたかったのです。
名前もつけました。
 
生花新風体 流水
 
立花新風体 氷河
 
あともう1つは、見てのお楽しみです。
チェーホフと生け花のコラボレーション、お楽しみに。
 
 
「オーバーオールでもいいですか?」
 
これは昨日ある俳優さんから出た質問です。衣装についての質問です。
 
私は彼に「ゴルフ好き」というオーダーを出していました。ゴルファーがオーバーオールを着るでしょうか?考えにくいですね。
では、なぜ彼はオーバーオールを提案したのか。それには理由があります。
 
私が彼にゴルフ好きたれ、と要求したのは、庭でゴルフの練習をしながら子どもたちが遊ぶのを眺めているような、そんな父親像を求めたからです。上品で、落ち着きがあって、だけど頼もしくて、優しい父親。家庭を守る力を持った父親です。アメリカ人のあるべき姿です。
 
しかし彼はオーバーオールを選んだ。厳密にはオーバーオールと、チェックシャツと、麦わら帽子を選んだ。もうわかりますね?そうですアイダホです。
 
彼は自分自身にしっくりくるゴルフウェアーを見つけられなかった。しかしそこで諦めることなく、オーバーオールの、アイダホの農夫としての父親像を提案してきた。
 
私は泣きました。彼の役に対する深い深い理解と、思いやりに。それだけじゃありません。アメリカの歴史や、地域の特産品まで熟知していないとこの提案はできません。これです。これこそが私が役者に求めていたことなんです。
 
大げさと思うでしょうか?決してそんなことはありません。
役者は人間です。人間には個人差があって、人それぞれに得意なこと、苦手なことがあります。ましてや我々小劇場の役者たちは、芝居で生活をしているわけではありません。経験の浅い人、不器用な人、色んな人がいます。中国の雑技団のように幼少から特別な訓練を受けているわけでも、特別な資格や免許を持っているわけでもありません。限りなく一般的な人々なんです。ではなにが我々を役者たらしめるのか。
それは突出した身体能力でも、類稀なる演技力でもありません。発想です。
 
できないことをできるようにしろというのは、限られた稽古の期間しか与えられていない役者にはいささか酷な話です。しかしそこで諦めてしまったり、できるフリをしたり、できないままヘラヘラ笑ってやり過ごす役者はクソです。
 
できないことを、できることに変換する。その発想が役者には大切だと私は考えます。知恵を絞って、自分にできることに置き換える。その作業の過程で役者は作品をより深く理解します。そして変換の過程を踏んだ役やセリフは、紛れもなくその役者自身のアイデアとなり、彼の言葉となるのです。
 
それはときおり演出家のオーダーと異なる結果にたどり着くでしょう。それを嫌う演出家もいるかもしれません。しかし私は、役者自身の発想を愛しています。私の小さな脳みその描いた18色くらいの世界に、彼らが手を加えることで124色くらいに彩られるのです。私は芝居を作る工程の中で、この役者自身の発想が見える瞬間が一番好きです。孤独な芸術にはない、演劇ならではの奇跡です。
 
演出家の指示をただ口を開けて待っている役者は中耳炎になればいいと思っています。
 
このアイダホの農夫にぜひご注目ください。彼の名前は川上憲心。私が涙を流した彼の知恵と、思慮深さをどうか劇場で目撃してください。 出番は2分もないです。セリフは3個です。全部7文字以内。
 
 
 
私たちがどんな風に作品を作っているか。その一端が伝われば幸いです。あと2週間と少しで幕が上がります。その直前まで私たちは足掻きます。より良いものをお客様にお届けできるように。おっぱいを。生け花を。アイダホの農夫を。その全てを全力で届けます。
 
あなたを、待っています。
 
フクースナ
 
 
 

 
わたしはカモメ。
 
 
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プロフィール

guizillen(ギジレン)

Author:guizillen(ギジレン)
guizillenとは?
2014年秋口に結成した手作り劇団。
メンバーは佐藤、門田、渡辺、片腹、オノ。
2014年末に第1llen
「センチメンタル・ジャーニー」でスタンディングオベーションに包まれて華々しくデビュー。
2015年5月に第2llen「非現実の王国」、2015年12月に第3llen「真鍮の月」にて着々とコアなファンを獲得している。2016年8月には第4llen「土木座」を満員御礼にて終了。12月には第5llenを公演予定。

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